「シド」
ベッドの上に片膝を立てて座り、煙草を吹かしていた。
ゆらゆらと上がる紫煙が霧のように散って、その姿をぼやけさせた。
「どうした」
煙は、ゆっくりと薄れていく。
その向こうにいるシドは、変わらない静かな眼差しで、まっすぐに私のことを見ていた。
「ぼうっと突っ立ってねぇで、こっち来い」
煙草をもみ消しながら、片腕をこちらに伸ばす。
私は扉の前で足を止めたまま、首を小さく横に振った。
「今日は、話がしたくて」
「……アッチ行くか」
ベッドから立ち上がったシドは、大きな歩幅で私の前までやってきた。
私の手首を取り、「行くぞ」と手を引いたとき。
「私、もうここには来ない」
シドの足が、ピタリと止まる。
繋がった手からじわじわと、シドの熱が染みてくる。
こんな私を受け入れてくれた、熱。
私がシドを振り返ろうとしたのと。
シドが、私の両肩を掴んで振り向かせたのと。
それは、ほとんど同時だった。


