「………」
野間は何も言わずバイクを走らせた。
あっという間にいつもの定位置に到着し、野間の手を借りてバイクを降りる。
停車位置からRe:bidoまでは、徒歩一分もない。
だからいつも、この短い時間に交わす言葉は『またね』の挨拶になる。
「迎えはまた昼過ぎくらいっすかね。また後ほど」
私は扉の前で振り返った。
「ううん。お迎えはいらない」
「………」
「野間くん、ありがとう」
野間がこちらを向く気配がした。
だけどその視線を受け止めることはしなかった。
「やっぱ、カナコさん。ちょい待った──……」
伸ばされた野間の手をかわすように、Re:bidoの扉をくぐる。
いつもなら、すぐに野間の手によって外側から施錠された。
今日はすぐに鍵の音が鳴らなかったので、自分で内側から鍵をかけた。
ガコ、ガコ、と靴裏で木の床を叩きながら、奥の扉を目指す。
もう、迷いはなかった。
──ガチャ。
シドへ繋がる、重い扉を開けた。


