さ。
野暮用も済んだし、そろそろ帰るか。
その場に立ち上がると、俺のスラックスの裾をユキが掴んだ。
「なんだよ」
「好きって、他の女と何が違う?」
俺は「んー」と考えた。
ユキの場合、他人に興味がない分、極端だ。
言い寄ってくる女と適当に遊んだことはあっても、自分から求めているところを見たことがない。
他の女と比べるまでもなく、ぶっちぎりでカナコちゃん大好きだろうが。
……とは思うが、どう伝えるか。
「触ったときのテンションが違う」
まぁ、俺ら男の子だし。
気持ちが乗ってる女と、そうじゃない女だと全く違げーんだよなぁ。
「……ああ。たしかに」
ユキは自分の左手に目を落とし、呟いた。
……なんだ。
ユキにも思い当たるところがあったみたいだ。
何やら一人で納得したらしいユキを背に、帰り支度をする。
リビングの戸に手をかけたところで、俺は足を止めた。
一つ、ユキに言っておきたいことを思い出した。
「お前って、気に入ったヤツにあだ名つけるクセがあるよな」
「あだ名?」
「どうしてカナコちゃんのことを『かぁこ』って呼ぶのか、一度考えてみるといい」
これは、俺からユキへの宿題。
それだけを言い残して、ユキの家を出た。


