「………」
俺は一度、深く息を吐いた。
この街にきて、もう七年か。
コタコが死んで、お前の時間は止まった。
あの日、俺が。
お前に伝えてやりたくて、伝えきれなかったこと。
今、やっとお前に届けられる。
「ユキ」
「なに」
俺はソファから立ち上がり、ユキの目線まで屈んだ。
迷い子のようなユキの瞳に、思わず頬が緩む。
いつかみたく、丸めた拳。
──トン、と。
ユキの胸の真ん中に当てた。
「ユキ。今お前が苦しいと思う感情の名前は、嫉妬」
「……『嫉妬』?」
「嫉妬の源泉は、恋心」
「………」
「お前、カナコちゃんのこと好きだろ」
あの日。
屋上で冷たく眠った心が、嫉妬の熱に溶けて。
今、この瞬間に。
恋心と共に、芽吹いていく。
とくん、とくん、と時間が動きだす。
「………」
まるで、何か面白いものを見つけた子供みたいに。
ユキの瞳の奥が、微かに光ったように見えた。


