余所者-よそもの-【 2 】



「………」

俺は一度、深く息を吐いた。


この街にきて、もう七年か。

コタコが死んで、お前の時間は止まった。

あの日、俺が。
お前に伝えてやりたくて、伝えきれなかったこと。

今、やっとお前に届けられる。


「ユキ」

「なに」


俺はソファから立ち上がり、ユキの目線まで屈んだ。

迷い子のようなユキの瞳に、思わず頬が緩む。


いつかみたく、丸めた拳。

──トン、と。
ユキの胸の真ん中に当てた。


「ユキ。今お前が苦しいと思う感情の名前は、嫉妬」

「……『嫉妬』?」


「嫉妬の源泉は、恋心」


「………」



「お前、カナコちゃんのこと好きだろ」



あの日。
屋上で冷たく眠った心が、嫉妬の熱に溶けて。

今、この瞬間に。
恋心と共に、芽吹いていく。


とくん、とくん、と時間が動きだす。


「………」

まるで、何か面白いものを見つけた子供みたいに。

ユキの瞳の奥が、微かに光ったように見えた。