ユキとリビングに入り、戸を固く閉じた。
間違ってもカナコちゃんに俺らの会話が聞こえてしまわないように。
そんなことをしている間も、ユキは絶えず俺を睨みつけていた。
さっさと話せ。
そんな目をしている。
気付いてはいるが、知らんぷりをして。
ゆっくりとソファに身体を沈め、電子タバコにスティックを差し込む。
「今日、新しい店の大事な契約の日だったんだろ?」
「……潤ちゃん」
「もしかして、すっぽかしてきたのか?」
「どういうことだ」
ユキはカナコちゃんの眠る寝室に一番近い廊下の扉の前に突っ立った。
本題に入ろうとしない俺に、苛立ちと焦りがどんどん膨れ上がっていくようだった。
「誰がアイツを傷つけた?」
ユキの声は、努めて冷静を装っていた。
けれど、その表情はまるで追いついていない。
ちぐはぐだ。
「誰だと思う?」
すうう、と電子タバコを吸い込み。
はぁ、と煙をゆっくりと吐いた。
じらして、じらして。
ユキの感情を煽る。


