余所者-よそもの-【 2 】



──ガチャ……。

静かに寝室のドアノブを捻り、扉を開けば。

すぐ前に立っている、ユキ。


忙しなく上下する、肩。
乱れたヘアセット。

よほど急いだらしい。


ユキは俺を見るなり、顔をしかめた。

肩を押しのけ、強引に身体を滑り込ませようとする。


「………」

「退けよ」


通せんぼする俺に、ユキは苛立った目を向けてくる。

俺はピンと立てた人差し指を、口の前に添えた。


「今やっと寝たとこだ」

声をひそめて言うと、ユキはぐっと唇を噛み締める。

静かになったことを確かめてから、ユキを寝室へと通してやった。


「………」

ユキは固く口を結んだまま。

ベッドに横たわるカナコちゃんを見下ろした。


熱に浮かされ、赤らんだ顔。
息苦しそうに寄せられた眉。
薄く開いた唇から零れる、熱っぽい吐息。

鼻の下から頬のラインに走る、擦れた血の跡。

顔の両脇に添えられた小さな両手には、点々と肉が抉れた傷がある。

乱暴に破かれたシャツに、開かれた胸元。
その白い鎖骨から胸の谷間にかけて留まり固まった、赤黒い血。


ユキの大きな猫目が、見開かれた。

そして、みるみるつり上がっていく。


俺はユキの強張った肩に、ちょんちょん、と触れた。

ギチギチと、ぎこちない視線がこちらを向く。


「あっちで話そう」

リビングの方向を指さし、促した。


ユキはもう一度カナコちゃんを見つめたあと。

名残惜しそうに視線を剥がし、黙って俺についてきた。