余所者-よそもの-【 2 】



「………」


汗の浮かぶ、カナコちゃんの額。

その真ん中にある大きな傷跡を眺めながら、ふと思う。


この子はとても不思議だ。

一見、死にたがりかと思うほど、傷を負うことに躊躇いがない。


でも、どうしてか。
これまで出会った誰より、カナコちゃんは人間臭かった。


生のスレスレを、死に狂いで生きてる感じがする。

自分が生きることで手一杯なくせして、それでも他人に手を差し伸べる。

まるで、自分の命をちぎって誰かに分け与えることで、自分自身も生き延びているような。

そんな血生臭い何かに、常に覆われている。


この血生臭さの正体は、きっと優しさだ。

カナコちゃんの行き過ぎた『思いやり』や『気遣い』は、自分以外の誰かに見返りを求めることをしない。

そういうものを、ユキはずっと理解できなかった。


──『何度も読んだんだ。この本の内容はわかるのに、肝心なところがわからない』

──『前に潤ちゃんが言った『思いやり』と『気遣い』。俺がどうすれば、コタコがまた笑ってくれるのかが、どうもわからない』


……いや。

コタコの死とともに、その答えを探すことをやめてしまった。


──『……コタコは、最も効率的な生き方を選んだんだね』

ユキは、社会人になってからも全てを論理で処理した。


店の経営も、人間関係も。

わかりやすい損得勘定と、利害関係で成り立たせ。

必要以上に、人に求めない。
必要以上に、人と関わらない。

失っても傷つかない。

ある意味、器用な生き方。


そんなユキの調子を狂わせたのが、カナコちゃんだ。


──『お前……ッ!!Z地区にいるのか!!』

俺が知る限り。
ユキが怒りを露わにしたのは、Z地区でのあの出来事が初めて。


さて、そうなると。

──『アイツ、紫藤とデキてんだぞ!!』

──『AnBarを出て行けって、言われました』


ここに、どんな感情が隠れているのか。

もし、俺の予想が当たっているのなら。
これはちょっと、面白いことになってる。