余所者-よそもの-【 2 】



……いつか。
出会わなければよかったと思ったことがある。

コタコは、俺たちと出会わなければ。

万年二位のまま高校を卒業して。
大学に進学して。
立派な医者になって。

今も、生きていたんじゃないかって。


でも、そんな風に考えてしまうたび、一緒に過ごした時間まで否定しているような気がした。

俺の記憶の中にある、コタコが生きた時間の全部を捨ててしまうことは、ちょっともったいない。


コタコのことを想えば、今でも脳裏にチラつくのは、馬鹿みたいに能天気なアイツの笑顔。

「………」

感傷に浸っていると、目の前のベッドから「はあ……」と深い息の音がした。


俺はペットボトルの水を手に取り、キャップを開けた。
カナコちゃんの背中を片手で起こし、一口飲ませる。


「寝ろ寝ろ」

ベッドに身体を横たえてやる。

その瞼は、もう限界だと何度も上下をしているのに。
カナコちゃんは頑なに眠ろうとしない。

理由はわかってる。


「ユキなら大丈夫だから。寝ろって」

「じゃあ……0時になったら、起こしてもらえますか」

「いいよ」

「少し眠って休んだら、AnBarに帰ります」

「わかった」


「このこと、ユキさんには絶対言わないでください」

「おっけー」


汗で張り付いた前髪を指で払ってやると、くすぐったそうに目を細める。

ようやく観念したようで、そのまま深く目を閉じた。