……いつか。
出会わなければよかったと思ったことがある。
コタコは、俺たちと出会わなければ。
万年二位のまま高校を卒業して。
大学に進学して。
立派な医者になって。
今も、生きていたんじゃないかって。
でも、そんな風に考えてしまうたび、一緒に過ごした時間まで否定しているような気がした。
俺の記憶の中にある、コタコが生きた時間の全部を捨ててしまうことは、ちょっともったいない。
コタコのことを想えば、今でも脳裏にチラつくのは、馬鹿みたいに能天気なアイツの笑顔。
「………」
感傷に浸っていると、目の前のベッドから「はあ……」と深い息の音がした。
俺はペットボトルの水を手に取り、キャップを開けた。
カナコちゃんの背中を片手で起こし、一口飲ませる。
「寝ろ寝ろ」
ベッドに身体を横たえてやる。
その瞼は、もう限界だと何度も上下をしているのに。
カナコちゃんは頑なに眠ろうとしない。
理由はわかってる。
「ユキなら大丈夫だから。寝ろって」
「じゃあ……0時になったら、起こしてもらえますか」
「いいよ」
「少し眠って休んだら、AnBarに帰ります」
「わかった」
「このこと、ユキさんには絶対言わないでください」
「おっけー」
汗で張り付いた前髪を指で払ってやると、くすぐったそうに目を細める。
ようやく観念したようで、そのまま深く目を閉じた。


