余所者-よそもの-【 2 】



「……ユ──……」


ユキ、違う。

それは、違う。


俺たちは、非効率で、非合理的で、無駄だらけの時間の中を生きてる。


嬉しいとか、ムカつくとか、愛しいとか、楽しいとか。

そういうのを味わうために、俺たちは……。


でも、頭の中で迷子になった。

感情のわからないコイツに、一体何から言葉にすれば伝わるだろう。


俺には、何より大切なことなのに。

どう考え直しても、伝え方がわからない。


だって。
俺がこれほど恐ろしいと思うことを、平然と口にするユキの瞳は。

あまりに美しく、澄みきっている。



「……ユキ。お前、卒業後はどうすんの?」


ダメだ。
コイツを一人にしちゃ、いけない。


「進学、しねーんだろ」

「どうしようかな。やりたいことはないけど、サラリーマンは出来そうにないから。何か適当に起業でもしようかなと思ってる」

「いきなり経営か?金は?」

「投資でいくらかキャッシュはあるから。潤ちゃんは?」


俺はその場に立ち上がった。

寒さに痺れた足で、フェンス際まで歩く。


ユキを振り返った。

感覚のない両手を、それでも、めいっぱい広げて。


この冷たく悲しい空を、まっさらなユキの瞳から隠した。


──ユキ、俺を見ろ。


「俺は、糸冬町に行く」

「糸冬町?あんな荒れた街に、どうしてわざわざ?」

「シトウにさ、でっかいホストクラブがある。俺、そこでテッペン獲るんだ」


偉くなることが目的じゃない。
優れることが目的でもない。


論理も、正論も。
全部、蹴り捨てられた終わりの街で、ただ馬鹿みたいに好きなことをやる。


──俺を、見とけ。

お前の前で、なんでも自由にやって見せるから。


非合理で、無駄で、とても説明のつかない。

そんな不細工な感情に、何度も揉まれながら。


生きることの意味を、いつか絶対に、お前にわからせてやる。

だから──……。



「ユキ、お前もついて来い」



……一緒に馬鹿になって、生き狂おうぜ。