「……ユ──……」
ユキ、違う。
それは、違う。
俺たちは、非効率で、非合理的で、無駄だらけの時間の中を生きてる。
嬉しいとか、ムカつくとか、愛しいとか、楽しいとか。
そういうのを味わうために、俺たちは……。
でも、頭の中で迷子になった。
感情のわからないコイツに、一体何から言葉にすれば伝わるだろう。
俺には、何より大切なことなのに。
どう考え直しても、伝え方がわからない。
だって。
俺がこれほど恐ろしいと思うことを、平然と口にするユキの瞳は。
あまりに美しく、澄みきっている。
「……ユキ。お前、卒業後はどうすんの?」
ダメだ。
コイツを一人にしちゃ、いけない。
「進学、しねーんだろ」
「どうしようかな。やりたいことはないけど、サラリーマンは出来そうにないから。何か適当に起業でもしようかなと思ってる」
「いきなり経営か?金は?」
「投資でいくらかキャッシュはあるから。潤ちゃんは?」
俺はその場に立ち上がった。
寒さに痺れた足で、フェンス際まで歩く。
ユキを振り返った。
感覚のない両手を、それでも、めいっぱい広げて。
この冷たく悲しい空を、まっさらなユキの瞳から隠した。
──ユキ、俺を見ろ。
「俺は、糸冬町に行く」
「糸冬町?あんな荒れた街に、どうしてわざわざ?」
「シトウにさ、でっかいホストクラブがある。俺、そこでテッペン獲るんだ」
偉くなることが目的じゃない。
優れることが目的でもない。
論理も、正論も。
全部、蹴り捨てられた終わりの街で、ただ馬鹿みたいに好きなことをやる。
──俺を、見とけ。
お前の前で、なんでも自由にやって見せるから。
非合理で、無駄で、とても説明のつかない。
そんな不細工な感情に、何度も揉まれながら。
生きることの意味を、いつか絶対に、お前にわからせてやる。
だから──……。
「ユキ、お前もついて来い」
……一緒に馬鹿になって、生き狂おうぜ。


