大学入試を目前に控えた、年末。
12月25日──クリスマス。
放課後。
いつものように俺とユキは、コタコの家のポストにルーズリーフを投函した。
すると、庭の奥から一人の女性が、白い息を吐きながら駆け寄ってくるのが見えた。
腰にエプロンを巻いた、中年の女性。
最初は母親かと思ったけど、その身なりからしてなんとなく、この家のお手伝いさんのような気がした。
やがて、女性は息を切らしながら俺たちの前に立った。
何かを堪えるように目を伏せると、エプロンの大きなポケットにそっと手を差し入れる。
──取り出したのは、一通の黄色い封筒。
それを、ユキへ差し出した。
「毎日……コウタさんのために、ありがとうね」
その小さな感謝の言葉は、何度もインターホン越しに聞いた声。
「………」
ユキは、差し出された封筒に目を落とす。
手を伸ばし、静かに受け取った。
俺は再び女性に目を向ける。
「コウタくんに、会わせてもらえませんか?」
「それは……ごめんなさい」
「どうしてですか?」
「禁止されていますので」
それは、誰に。
どういうことだよ。
結局、女性はそれ以上何も答えてくれなかった。
ただ静かに頭を下げ、家の中へと戻っていった。


