俺はユキの持つ本を力任せに奪い取った。
そのまま屋上のフェンス越しに、思いっきり放り投げてやった。
分厚い藍色の本は、──バサバサ……と。
一瞬だけ、自由を求めて羽ばたく鳥のようにページを大きくはためかせ、真っ逆さまに落ちていった。
俺は後ろを振り返る。
ユキの目の前に立ち、目の高さまで腰を落とした。
「ユキ。感情や心を頭だけで理解しようとすんな。ちゃんと”ココ”で考えろ」
俺は握り拳を──トン、とユキの胸の真ん中に当てた。
ユキはその拳に目を落とし、ゆっくりと俺を見上げた。
迷子のような瞳だった。
「意味が、わからない」
「お前はどうしたいと思う?」
「わからないから困ってる。きっとコタコは俺に会いたくない。だから来ない。拒絶だ。俺に会っても、きっといい顔をしない」
「じゃあ、どうなりたいと思う」
「どうなりたい?」
「そう。お前はコタコと、どうなりたい」
今を迷うお前は、足元の理屈ばっか追ってちゃダメだ。
あるんだろ、その先に望むものが。
だからそんなになって、悩むんだろ。
コタコに対して、ここまで悩めるお前の中には、絶対にあるはずだ。
「俺は……コタコと、遊びたい」
脳みそじゃとても説明のつかない。
────非合理的な欲求が。


