余所者-よそもの-【 2 】



「……わからないんだ」

「何がわからないんだよ」

「テストで点数が取れなくなった。学校に来れなくなった。多分、コタコは困ってるんだと思う」


ぽつり、ぽつり。
弱々しい言葉を吐いてから、深く息を吸う。


しばらくの沈黙のあと、ユキはどこからともなく一冊の本を取り出した。


それはいつか、コタコがここで見せびらかしていた本。

──『僕は今、友達ってものがどういうものなのかを学んでいるんだ』


藍色のハードカバー。

『社会的動機づけとしての「友情」』


ユキが手に持つそれは、カバーの角が白く擦れているし、紙の端だってヨレている。


「何度も読んだんだ。この本の内容はわかるのに、肝心なところがわからない」

「………」


「前に潤ちゃんが言った『思いやり』と『気遣い』。俺がどうすれば、コタコがまた笑ってくれるのかが、どうもわからない」

「ユキ……」

「どうすればいいと思う?潤ちゃん」


……そうか。

ユキは、感情がわからないだけ。


感情が欠如してるわけじゃない。

ちゃんと、存在してる。


──『なんでコタコは怒ってるの?』


ユキだって、人知れず苦しんでいた。

自分なりの不器用なやり方で、答えを必死に探し続けてたんだ。


なのに俺は。
コイツは感情がわからないヤツだからと決めつけて、何もわかろうとしていなかった。


……友達、失格だ。