「……わからないんだ」
「何がわからないんだよ」
「テストで点数が取れなくなった。学校に来れなくなった。多分、コタコは困ってるんだと思う」
ぽつり、ぽつり。
弱々しい言葉を吐いてから、深く息を吸う。
しばらくの沈黙のあと、ユキはどこからともなく一冊の本を取り出した。
それはいつか、コタコがここで見せびらかしていた本。
──『僕は今、友達ってものがどういうものなのかを学んでいるんだ』
藍色のハードカバー。
『社会的動機づけとしての「友情」』
ユキが手に持つそれは、カバーの角が白く擦れているし、紙の端だってヨレている。
「何度も読んだんだ。この本の内容はわかるのに、肝心なところがわからない」
「………」
「前に潤ちゃんが言った『思いやり』と『気遣い』。俺がどうすれば、コタコがまた笑ってくれるのかが、どうもわからない」
「ユキ……」
「どうすればいいと思う?潤ちゃん」
……そうか。
ユキは、感情がわからないだけ。
感情が欠如してるわけじゃない。
ちゃんと、存在してる。
──『なんでコタコは怒ってるの?』
ユキだって、人知れず苦しんでいた。
自分なりの不器用なやり方で、答えを必死に探し続けてたんだ。
なのに俺は。
コイツは感情がわからないヤツだからと決めつけて、何もわかろうとしていなかった。
……友達、失格だ。


