「アイツんち、代々医者家系らしい。多分、相当プレッシャーがあるんだろうな」
「それはおかしい」
「うん?」
「コタコの家系なんて、俺に関係がない。なのに、俺を憎むのはやっぱり筋違いじゃないのか?」
「………」
付き合いを重ねるうちに。
いつしか俺は、コイツの欠落を知った。
ユキには、感情というものがわからない。
自分の気持ちもわからなければ、人の気持ちだってわからない。
本当に何も知らなかった。
例えるなら、大人の頭脳を持って生まれてきてしまった、無垢で頭でっかちな赤ん坊。
ユキは極端に論理だけで、この世界を生きてしまっている。
「人にはそれぞれ事情がある。お前の言ってることは正しいよ。でも、思いやりとか気遣いってモンを少しは知れ」
俺がこう言っても、ユキは難しそうな顔をするだけだった。


