俺は呆気に取られ、立ち尽くした。
いつも能天気に笑っていたコタコ。
腹の底に沈めていたものに、少しも気づかなかった。
「………」
振り返り、ユキの顔を覗き込む。
これといった表情の浮かばない、綺麗な顔。
コイツが何を考えているのか、俺にはわからない。
大丈夫か?
そんな目で、コタコの消えた先を眺めるユキを見つめた。
やがてユキは長いまつ毛に縁取られた瞳で、一度だけゆっくり瞬きをした。
「俺、コタコを見下してた?」
「いいや」
「入学式の挨拶は、ただ面倒で断っただけだ。コタコが入試で2位だったことも、コタコが引き受けることも、なんならコタコの存在も俺は知らなかった」
「そうだな」
「俺、コタコに憎まれるようなこと、したかな?」
ユキは極めて冷静に自分の中を探している。
コタコが怒った理由を。
だけど、それじゃいつまで経っても見つからない。
そもそもこの答えは、お前の中には存在しないんだから。


