「疲れた……」
もう終わった、と言わんばかりにコキコキと首を回した瑞生。
一瞬白目から戻った熊は、その場で勢いよくゲロを吐いた。
「ぅぅッ、ォォォエッ……!」
ボタボタボタボタ……!と、それはすげぇ量を地面に吐き散らかす。
一体、何が起きた?
多分、この場にいる全員が思ったことだった。
リーダーがやられたというのに、イタ校の奴らもただ茫然と立ち尽くしている。
「おま……なん、しよ……た?」
「嘔吐中枢を刺激した。的がデカいおかげで、当てやすかったよ」
瑞生の種明かし。
なるほどな、と理屈自体は理解できた。
でも、わかったところで誰がそんな芸当できるんだよ、と恐ろしく思う。
瑞生は執拗に熊の顎や頭の周りを攻撃していた。
平衡感覚をバカにさせ、眩暈と嘔吐を誘発したんだろう。
人体の仕組みを理解し、利用した。
嘘みたいに鮮やかで、巧みな戦い方。
「なんっそ……れ……」
熊はそんなこと到底理解できないまま。
べちゃっと自分の吐いたゲロの上に顔をつけて、そのまま気絶した。
このとき、コイツはきっと打ちのめされたんだろう。
身体は、完膚なきまでに。
心は……たぶん奪われた。
なんとも馬鹿げていて、おまけにゲロ臭い話だが。
これが、イタ校番長。
──サンコンと、俺たちの出会いだった。


