「なっななな何かズルをしてるのか?」
「ズル?」
「そ、そうだ!毎回満点か、限りなくそれに近い点数だなんて、どう考えてもおかしいだろう!」
「なぜ?」
「授業にも出ていない君が、どうしてそんな点数を取れるんだよっ!」
唾を飛ばさんばかりの勢い。
瑞生は綺麗な猫目を、少しだけ丸くした。
「テストに出る問題なんて、決まりきってるじゃないか」
「は……はぁ?」
「あらかじめ範囲が設定されていて、出てくる可能性のある問題なんてせいぜい数百通り。逆になんで間違う?」
瑞生は小首を傾げてみせると、何事もなかったかのように再び歩き出す。
「……ま、まままま待ってくれっ」
もっさりメガネは足をつんのめらせながら、必死で瑞生の背中を追いかけた。
「ひ、秘訣は!?」
瑞生は振り返りもせず、正面玄関とは反対の裏庭へと歩いていった。
「範囲はどうやって絞ってる!?せ、先生のクセとか、傾向とかをリサーチしたりして──……」
やがて二人の姿が校舎の陰に消えると、周囲はワッとざわめいた。
「瑞生くんの声、初めて聴いたぁ」
「俺も今度勉強の秘訣聞いてみようかな」
「瑞生くんって喋れるんだね」
「なんだよヤナギのやつ。喧嘩売ったのか、それとも媚に行ったのか」
『瑞生降臨』
数日間は、この話題で持ちきりになった。
以来、もっさりメガネが瑞生について回る姿を何度も目撃した。
いつも小さなメモとペンを片手に「勉強の秘訣は!?」なんて。
ろくに相手にしてもらえない瑞生の後ろを追いかけるソイツは、とても滑稽だった。
それも日々繰り返し。
数週間後には、どこか面白そうに口端を上げた瑞生が、何かおかしな下僕を連れて歩いているように見えた。
あのクソダサもっさりメガネが、どこか小さなところで瑞生を負かしたってことだ。
……やっぱ、ガリ勉って怖ぇなって思った。


