「──……さ、さささあ!!」
やっとのことで階段を下りてきたソイツは、息を切らせながら瑞生に詰め寄り、
「答えてもら……ブッ!」
なんと。
最後の一段を踏み外して、瑞生の胸にダイブした。
俺の前に居た女の子が、小さく「きゃああ」と黄色い悲鳴を上げる。
「あ……あああ、す、すすまない」
もっさりメガネは瑞生の胸板に手をつき、体勢を整えた。
ズレた瓶底メガネのポジションを正す。
瑞生は、もう目と鼻の先。
あれだけ息巻いて、ようやく目の前に立ったくせ。
「………」
何かに当てられたみたいに、呆然として動かない。
おいおい。
芽生えてんじゃねーだろうな。
男だぞ、ソレ。
すると瑞生は彫刻のように整った顔を一切崩さないまま、やっぱり気だるそうに口を開いた。
「何か、俺に」
「……あ」
「用があったんじゃないのか?」
目の前のチビを見下ろしながら、瑞生はゆっくりと喋った。
周囲のざわめきが止んだ。
あちこちから、小さな感嘆の声が漏れる。
誰もが声を殺し、瑞生の言葉に聞き耳を立てていた。


