「信じないぞ!!!」
玄関ホールに響き渡った、突然の怒声。
辺りがざわざわとどよめく。
人だかりの中心から、伝言ゲームのように声が伝わってきた。
「柳くんだ」
「柳くんだって」
「ほら、2位の」
「万年2位のヤツだ」
──柳 康太(ヤナギ コウタ)。
知ってる。
入学式で、新入生総代として挨拶したヤツだ。
入学時はトップだったはずが、いざ入学すれば一位の座はずっと瑞生に奪われたまま。
俺は面白半分で、声が聞こえた方向をきょろきょろと探した。
「どう考えてもっお、おかしいだろう!!どうして授業にも参加していない君が!いいいいいつも首位なんだ!?」
人だかりの向こうに、ようやく声の主が見えた。
そうだそうだ、コイツだ。
天然パーマのもっさりとした不潔そうな黒髪。
瓶底メガネの奥に小さな目。
少し小太りなチビ。
ソイツは子犬のようにぷるぷると震えて、指をさしていた。
その指を辿った先。
玄関ホールに続く階段の下へ目をやった。
そこには、きっと登校したばかり。
気だるそうにスクールバッグを片方の肩に担ぎ、 死んだ魚のような目をしている男。
────瑞生がいた。


