俺は化学準備室へと向かった。
改装を幾度と繰り返された校内で、唯一手つかずのここ。
俺の隠れ家。
勝手に持ち出した鍵を差し込み、滑りの悪い木の扉を少し持ち上げながら引いて、やっとのことで開ける。
「さーて。今日は誰ちゃんだっけ」
わくわくと女の子を待った。
「お待たせ!潤くんっ」
「よ!」
可愛い女の子が俺を呼ぶ声。
俺は三度の飯よりこれが好き。
「何してたの?」
「今月のテストの範囲見てた」
「そっか。もうテスト期間に入っちゃうね。私も潤くんと遊べるのは今日が最後だなぁ。勉強しなきゃ」
くるくると丁寧に巻かれた髪を指先で遊ばせながら口を尖らせる女の子に、愛想笑いを返す。
俺はとっくに勉強への情熱を失っていた。
それでもテスト範囲を確認するのは、うざったい追試を免れたいだけ。
ここに居る育ちの良いお嬢様も、俺とこんなところで油を売っている暇なんてないはず。
それでも俺のところに来ちゃうんだから、なんて健気で可愛い生き物だと思う。


