「サンコン」
「なんです」
「さっきからえらくスカしたツラしてんな?」
「………」
「お前、カナコちゃんがああなってるの、知ってたよな?」
「………」
「知ってて、シカトぶっこいたよな?」
聞きたくない。
そう思った。
サンコンは、私への態度は何も変わらなかった。
けれどずっと。
バンが私にどんなことをしても、注意はしなかった。
その意味は、尋ねなくてもわかってる。
「私には、店を守る責任があります」
「このこと、ユキは知ってんのか?」
「このこと、とは?」
「今の店の状態だ。すっ呆けんな」
「……ユキにとって、必要な情報は伝えてあります」
「これが、ユキにとって不必要なことだっつーのかよ」
「私はそう判断しました」
サンコンのその言葉に、バンは威勢を取り戻したように声を張り上げる。
「ユキだってコイツを持て余してんだ!だから俺たちが代わりに行動してんだよ!」
そう。
ユキもきっと、私がいない方がいいと思ってる。
「何も知らねぇのはお前だけだぞ、潤!何も知らねぇクセにしゃしゃり出てく──」
「何もわかってねーのは、お前らの方だ」
潤は冷ややかな目をして、天井を仰いだ。
深く溜息を吐いてから、正面を向く。
スーツジャケットの裾をぴん、と引いて整えた。
背筋を伸ばし、歩きだす。
「………」
床にへたり込んだ私を横抱きにすると、すくと立ち上がった。
「バンはともかく……サンコン。お前は付き合い長いんだから、いい加減わかれよ」
「何をですか。私には、わかりません……」
サンコンは、黙って顔を伏せた。
潤は構わず、出口に向かって真っ直ぐに歩く。
「とりあえず、ユキに絶交されたくなきゃ、この上。カナコちゃんの部屋」
「………」
「綺麗に掃除しとくことだな。俺からの助言はそんだけ」
そう言い残した潤は、私を抱いたまま。
しんと静まり返ったAnBarを、後にした。


