私はふらつく身体をなんとか立たせ、更衣室の扉を開けた。
視界に飛び込んできたのは、フロアの真ん中で仰向けになって倒れるバン。
その上に馬乗りになり、バンの胸倉を締め上げる潤。
「あのぐちゃぐちゃの部屋も。カナコちゃんの怪我も。全部お前がやったんだな?」
「……っお前はなんも知らねぇだろうけどな!!アイツ、紫藤とデキてんだぞ!!」
止めなきゃ。
そう思うのに、力が抜けた。
潤にも知られた。
ぺたん、とその場にへたり込んだ。
「それで?」
……え?
「カナコちゃんを傷つけた理由は、それだけか?」
「不要なモンをこっから出すんだ!あんな女ゴミだ、ゴミ!」
「そうか。そのためにこうやって……」
──バキィッ!と、潤の拳がバンの頬にめり込んだ。
「……女の顔面、殴りつけて。こうやって……」
──ブチブチッ!と、バンの襟首にかけられた潤の両手が、制服のボタンを全部弾き飛ばした。
「ロクな抵抗もできない女を、簡単に傷つけたのか?」
「………」
「弱いお前は、紫藤に敵わないから。だから自分より弱い女に手を上げたのか?」
「………」
「……答えろッ!!バンッ!!」
潤は胸倉を締め上げ、息がかかるほどの距離で怒鳴りつけた。
バンは悔しそうに顔を歪めた。
しばらくの間睨みつけた潤は、その手を放す。
「お前のこと、ガキだとは思ってたけど。クソの付くガキだったとはな」
力なく横たわったバンは、天井を見つめていた。
フロアの照明を反射したその瞳は、涙が浮かんでいるように見えた。
「……店の、ためだ。ユキさんの……ために、俺は……」
バンの呟く中、潤はゆっくりと立ち上がり、背を向けた。
潤の足は、カウンターに無言で突っ立つサンコンまで進む。


