余所者-よそもの-【 2 】



私はふらつく身体をなんとか立たせ、更衣室の扉を開けた。


視界に飛び込んできたのは、フロアの真ん中で仰向けになって倒れるバン。

その上に馬乗りになり、バンの胸倉を締め上げる潤。


「あのぐちゃぐちゃの部屋も。カナコちゃんの怪我も。全部お前がやったんだな?」

「……っお前はなんも知らねぇだろうけどな!!アイツ、紫藤とデキてんだぞ!!」


止めなきゃ。
そう思うのに、力が抜けた。

潤にも知られた。
ぺたん、とその場にへたり込んだ。


「それで?」


……え?


「カナコちゃんを傷つけた理由は、それだけか?」

「不要なモンをこっから出すんだ!あんな女ゴミだ、ゴミ!」


「そうか。そのためにこうやって……」

──バキィッ!と、潤の拳がバンの頬にめり込んだ。


「……女の顔面、殴りつけて。こうやって……」

──ブチブチッ!と、バンの襟首にかけられた潤の両手が、制服のボタンを全部弾き飛ばした。

「ロクな抵抗もできない女を、簡単に傷つけたのか?」

「………」


「弱いお前は、紫藤に敵わないから。だから自分より弱い女に手を上げたのか?」

「………」


「……答えろッ!!バンッ!!」


潤は胸倉を締め上げ、息がかかるほどの距離で怒鳴りつけた。

バンは悔しそうに顔を歪めた。


しばらくの間睨みつけた潤は、その手を放す。


「お前のこと、ガキだとは思ってたけど。クソの付くガキだったとはな」


力なく横たわったバンは、天井を見つめていた。

フロアの照明を反射したその瞳は、涙が浮かんでいるように見えた。


「……店の、ためだ。ユキさんの……ために、俺は……」


バンの呟く中、潤はゆっくりと立ち上がり、背を向けた。

潤の足は、カウンターに無言で突っ立つサンコンまで進む。