「………」
やがて二階から戻ってきた潤の顔つきは、明らかに苛立っていた。
「しつこくてごめんな。やっぱり何があったか教えてくんね?」
「……ちょっと、いろいろあって」
「そっか。人間、性分ってモンがあるもんな」
「………」
「それはお互い様っつーことにしよう」
首を傾げると、潤の手がそっと私の瞼を撫で下ろした。
「すぐに休めるとこ連れてってやっから」
「……潤さん?」
「少しの間、目ぇ瞑って寝てろ」
潤はそれだけを言い残し、勢いよく更衣室を飛び出して、だけどそっと扉を閉めた。
「………」
扉を閉ざしても、目を塞いでも。
フロアの声は、筒抜けだった。
「──女の子を傷つけること。俺が一番許せねーことだ」
静かで淀みない声。
潤が、怒ってる。
「カナコちゃんのアレ、誰がやった?」
「しらね」
「じゃあ聞き方変えるわ。お前だな?バン」
「悪い?」
「………」
「だってアイツ──……」
バンの声が途切れた、その瞬間。
鈍い音が、更衣室まで響く。
潤がバンを殴ったんだって、すぐにわかった。


