余所者-よそもの-【 2 】



しばらく私の言葉を待ったあと、潤は小さく息を吐いた。

スラックスの後ろポケットから取り出したのは、高級そうなハンカチ。

それを何の躊躇いもなく、私の鼻にあてがった。


こんなにいいハンカチを汚すくらいなら、頑張ってティッシュを取っておくんだった……。

そんなことをぼんやり考えていると、潤の手が鼻を押さえ直した。

もう片方の手が、そっと首の後ろに添えられる。


「……ん?カナコちゃん、もしかして熱ある?」


コクンと頷くと、潤は私の手首をとった。

鼻に当てていたハンカチを、そっと私の手に持たせる。


「手、痛むかもしれないけど、血だけ押さえてな」


くるりと向きを変え、私に背中を差し出した。


「乗って。2階で休もう」

けれど、私はその場から動けなかった。


「……なんだ?」

「2階は……使えないんです」


潤は訝しげにこちらを振り返った。

けれど、次の瞬間には立ち上がっていた。


「……潤さん、待ってっ」


呼び止めも虚しく。

潤は一人で後ろの梯子をのぼって、二階に上がってしまった。