ティッシュか、何か拭くもの……。
辺りを見回した。
……だめだ。
数歩先にあるものにさえ、手が届かない。
もういいや。
腕で、鼻の下を拭った。
腕に残った赤い筋を、ぼんやりと眺める。
……なんて情けない。
「ここは……終わりの街。……終わりには、何もない……か」
私も、空っぽだ。
『終わりが在るから、始まりが在る』
ふと、露天街の公園で見た朝日を思い出した。
冷えきった身体を、じんわりと温めてくれた光。
『堕ちるだけ堕ちることができればナンボかええやろ。そこでしか見えん景色があるでな』
『せいぜい、受け入れることやな』
そっか。
私、何を怖がってたんだろう。
もう、みんなに嫌われちゃってるのに。
失うものなんて、ほとんどない。
今更、何を守ろうっていうの。
どれだけ邪魔だって疎まれたって。
どれだけ酷い言葉を言われたって。
もういいじゃない。
受け入れる。
それで……伝えよう。
ユキに、サンコンに、バンに、みんなに。
楽しかったから。
AnBarが好きだったから。
今まで、ありがとうって。
それから、迷惑をかけてごめんなさいって。
ちゃんと謝るの。
許してもらえなくたって、いいや。
何も伝えられずにAnBarを去るのは、嫌だ。
元気になったら、ちゃんとする。
今はちょっとだけ、休もう……。


