「やめてっ」
両手を突っ張った。
──ぶちんっ。
その拍子に、胸元のボタンが勢いよく弾け飛ぶ。
「……な!」
声を上げたバン。
その視線を辿れば、開いたシャツに胸元が大きくはだけてしまっていた。
バンはあからさまに目を泳がせた。
パニックになったみたいに、空いた方の腕を振り回し、突っ張る私の両手を跳ねのけようとする。
「はっ、放せ!てめぇ……!」
「そっちが放してよっ」
「うるせぇ!」
もみ合いと混乱の末。
ワケのわからなくなったバンの手が、ガッ!と私の鼻柱に当たった。
「……っ」
その痛みに顔を押さえる。
その瞬間、バンが胸倉から手を放した。
支えを失った身体が、ぐらっと前に傾く。
咄嗟に突いた手のひら。
──鋭い、痛みが走った。
「……あ」
目を開ければ、視界一面に散ったガラス片。
手の痛みの理由なんて、見なくたってわかる。
……やってしまった。
倒れたまま動くことができない、私の頭上。
はあ、はあ、と粗い息をするバンは、立ち尽くしていた。
「……て、てめぇが放さねぇから、悪りーんだ……」
そう言って、ロッカーから自分の着替えを取り出し、
「ウゼーから。今日は表出てくんな……」
捨てセリフを吐いてから、更衣室を後にした。


