私は八賀の家を離れ、再び行くあてもなく歩いた。
ポケットのスマホが、やけに重く感じる。
財布はAnBarに置いたまま。
私は露天街の隅っこにある、公園のベンチに腰掛けた。
アンモニアの嫌な匂いが立ち込める中で、ぼうっと寂しい空を眺める。
これから、どこに行こう。
シドや野間に連絡をすれば、今夜眠る場所くらいはきっとある。
だけど、今日シドに頼ってしまえば。
……もう、AnBarに帰ることはないのかもしれない。
──『じゃあいつ出る?』
──『今日はいい。考えとけ』
でも、それでいいんだろうな。
『ここから出て行ってください』
AnBarのみんなに対しては、むしろその方が親切だ。
私だって、もう怖い。
AnBarに帰って、みんなに睨まれて。
お前のことなんか要らない。
そんな風に、拒絶されてしまうのが。
いい機会なのかもしれない。
こうでもなきゃ、きっとあの居心地のいい居場所を自分から手放すことはできなかった。


