やがて、大通りに差し掛かったころ。
熱気を帯びた人だかりが目に入った。
また、誰かが喧嘩しているのかな。
なんとなく人だかりの最後尾につき、周囲の野次馬たちの声に耳を傾けた。
「うお、前歯イった!」
「紫藤、出張らないのかな?」
「武装派の連中も馬鹿だな」
「なんでシトウに喧嘩売ったんだ?」
「紫藤さん来ないかなぁ」
どうやら、露天街の武装派とシトウが揉めているらしい。
そこにシドの姿はないようだ。
珍しいな。
シトウと露天街がモメることなんて、あまりないはずなのに。
「ほぉ。よぉ街に染まったモンやのぉ」
聞き覚えのある声に、後ろを振り返った。
「八賀さん」
「久しいな」
八賀は買い物帰りのようだった。
荷物で膨らんだ大きなレジ袋を、片手に提げている。
「喧嘩、止めに来たんですか?」
「ええや?ただの通りすがりや」
八賀は重たそうな袋を、ガサゴソと持ち直した。
もう片方の手には杖。
「持ちますよ」
私がレジ袋を受け取ると、八賀は何も言わずにギャラリーに背を向けた。
コツ、コツ、と杖を突きながら歩きだす。
「………」
ついて来いってことかな。
目的地は、きっとあの古民家。
私は八賀の横に並んで、ゆっくりと歩いた。


