気がつけば、私はシトウの真ん中を歩いていた。
切れた息を整えながら、あてもなく街を彷徨う。
足元を流れていくアスファルト。
前へ、前へと繰り出す自分の両足。
それをぼんやりと眺めながら、街の喧騒に耳を傾けた。
これからが夜の本番。
街はこの時間が一番騒がしい。
なぜか、AnBarで鳴り響いていたBGMよりも、こっちのほうがいくらか聞き心地がいい気がした。
……不思議。
ついこの間まで、恐ろしいと感じていたこの街の騒がしさが。
今は、こんなにも私を落ち着かせてくれる。
どうしてだろう?
何が変わったんだろう?
ひゅお、と生暖かい風が吹いた。
風に流された髪を目で追えば、そこにはいつもの街があった。
相変わらずいろんな人がいる。
殴り合いをしているサラリーマン。
スマホを耳に当てながら、泣きじゃくってる女子学生。
ぼうっと空を見上げ、立ち尽くす男性。
閉じたシャッターの前で、酒瓶を傍らに眠る老人。
深く俯いて歩く女性。
そっか。
寂しいのは私だけじゃない。
この街は、みんな寂しい。
そう思うと、顔を上げて歩くことができた。


