クラスの弟くん、私の前ではお兄ちゃん




「家の前まで送ってもらっちゃってごめんね…」


「大丈夫だよ。僕の家もここから近いから」



本当は駅を降りたところで解散しようと思っていたけど、犬飼くんが「ここまで来たら一緒だよ」と言って結局家まで送り届けてくれた。



そ、それにしても、犬飼くんがなかなか帰ろうとしない……!


なにか言いたいことでもあるのかな…?



「…あのさ、もしよかったら……」


「あーっ!お姉ちゃんっ、おかえりなさーい!」



犬飼くんがなにかを言いかけたのと同時に、家のドアが開いて可愛らしい声が聞こえてくる。



「ひな〜!来てたんだ!」


「今日からおかーさんがおしごとだから、お姉ちゃんのおうち行ってねって」


「えっ、そうなの!?お母さんから連絡来てなかったと思うんだけど…」



慌ててスマホを確認すると、少し前にお母さんから電話があったのに気がつく。



お母さんってば…相変わらず連絡が遅いんだから……。



「お姉ちゃん、この人だれー?」



ひなが私の後ろにいる犬飼くんの存在に気がついて、私に隠れながらそう聞いてくる。



「え、ああ!同じクラスの犬飼くんだよ。時間が遅いからって送ってもらったの」


「犬飼旭です。四宮さん、妹さんいたんだね」


「あさくらひなです、小学二ねんせいです」


「おお〜、上手に自己紹介できるね、すごいね!」



そう言いながらひなに目線を合わせてくれる犬飼くん。


そんな彼に心を開いたのか、ひなは嬉しそうにニコニコしながら犬飼くんの腕を引っ張る。



「あさひくん、一緒にあそぼ!」


「えっ、ひ、ひな?犬飼くんは帰るよ…?」


「やだ!ひな、あさひくんとあそぶの!」



犬飼くんからひなを引き離そうとすると、さらに力を込めるひなに呆れて犬飼くんと顔を見合わせる。



さすがにもう遅いから、今から犬飼くんに遊び相手になってもらうのは申し訳ないし……。


でも、ひなが諦めるとは思えないし…。



私がうーん、と頭を悩ませていると、犬飼くんがそうだ、とひなに向き直る。



「ひなちゃん。僕ひなちゃんと同い年の弟がいて、明日弟とベリーパークに家族四人で行く予定だったんだ。でも、両親が仕事で行けなくなって、チケットが2枚余ってるんだけど…」


「えっ、い、犬飼くん……?それはさすがに…」



だんだん犬飼くんの言いたいことが分かってきて、焦って止めに入るけど、もう遅かったみたい。


「いく!ひなもいく!!」


「ダメダメ!ベリーパークのチケットのお金、誰が出すのよ…」



美紀さんが出してくれるとは思えないし、お父さんに頼むのもなぁ……。


だからといってバイトをしているわけじゃないから自腹で払えるわけじゃないし…。



ひなには諦めてもらうために説得しようと口を開いたのと同時に犬飼くんも言葉を発す。



「それくらい大丈夫だよ?チケットが無駄になる方が勿体ないし」



それに…と言いながらはにかみながら頬をかく。



「僕たちふたりより、四宮さん達がいてくれるともっと楽しめると思うから」



まただ、この笑顔。


母性をくすぐられるような、でも、どこか安心感のある笑み。



「おねーちゃん、いこうよ!ひな、ベリーちゃんに会いたい!」



犬飼くんの笑顔に加え、ひなの愛らしい瞳に見つめられて、正気を保っていられる訳もなく。



「……じゃあ、私達も同行させてもらってもいいですか…?」


「もちろん!」



ひなと二人で頭を下げてお願いすると、犬飼くんはとても嬉しそうにまた微笑んでくれた。