だけど。 そんなわたしを見透かしたのか、知らずなのか、彼は、すれ違いざまに、私の肩に手を置いた。 ーーー熱い、手だ。 そう思った瞬間、気づいたら………彼の腕の中にいた。 「………………困らしてごめん。」 想像していたよりずっと、彼は筋肉質で逞しい腕をしていた。 子犬のような、可愛さではない。 ーーーー立派なひとりの"男"だった。 「また明日」 何事もなかったかように去っていった彼の背中。 ーーーー私は、何も返事ができなかった。