「……あ」

ふと、思い出して思わず声をあげた。

その声は、あまり広くない車内では、思ったより響いた。




「どうしました?結城さん」

そんなわたしに、優しく声をかけてくれる遠山さん。



「……あ、えっと。その、教室に忘れ物をしてしまって」

「なるほど。それは今日必ず必要なものですか?」

「はい、明日提出の宿題で……」



それは困りますねぇ、と顎に手を添える遠山さん。チラリと、若……蓮見くんの方を向く。

もちろん先日の件を知っているので、蓮見くんに判断を仰いでいるのだろう。



「……必要ない。お前ならすぐ出来るだろうから、授業前にやればいい」

「でも、明日はわたし当たる日だから、先にやっておきたくて……」



数学の宿題なのだが、その先生はその日の日にちの出席番号の人を当てて、黒板に式と答えを書かせる。そして、ちょうど明日はわたしの出席番号の日なのだ。



そう言うと、蓮見くんも少し黙ってから、

……仕方ないな。と呟く。



こういう時、同じクラスというのは話が早い。