その話は、ファンクラブの間でちょっとした騒ぎとなり、私はそれを亜美から聞いた。
亜美は美和先輩に憧れていたので、ショックが大きかったのだろう。
事情を知る私は、なんとも言えない後味の悪さを感じた。けれど、そんなにいい人になれるわけもなく、同情する気持ちは湧いてこなかったし、プライドの高い彼女が蓮見くんの"裏の顔"を誰にも話さなかったことに、安堵したくらいだ。
そして、あの日以来私の周りも少しだけ変わった。
今までは、朝学校についてから放課後の帰りの車に乗るまで、基本蓮見くんと接触することはない。そんな日常だった。
今もそれは変わらないけれど……。
休み時間や放課後などは極力一人になるなと言われているので、気をつけるようにした。
それと……、時折感じるようになった視線。
それと、女の子たちの誘いをかわすため、さっさと教室から出て行っていた蓮見くんが、私が出るまで席を立たなくなったり。
私が一人になることに対し、誰よりも敏感なったのは、彼だろう。
だけど、それはあくまでも私たちの間だけの変化であって。
当事者の美和先輩は、戦線離脱。
もう、私たちに接触してくることも、おそらくないはず……。
こうやって、
あの出来事は夢だったかのように、
平々凡々な日常に戻っていくのだ、と。
ーーーーーそう思った。