「起きろ」

「んっ、」

その声に、ゆっくり瞼をあげる。


……あれからなんとなく、会話を続けられるような言葉も見つからず、寝たふりをした。

顔を上げれば、車の目の前には、蓮見くん家の大きく立派な門がそびえ立っている。いつ見ても、凄いと思う。


先に車を降りていた蓮見くんにもう一度促され、車を降りた。



辺りは真っ暗で、夕飯の時間はとっくに過ぎている時刻だろう。

みんなもう夕飯食べちゃったんだろうなぁ。今日のメニューはなんだったのかな。

玄関に着くと、クラさんと虎丸ちゃんが出迎えてくれた。


「わんっ!」

クラさんの横で綺麗にお座りをしていた虎丸ちゃんは、勢いよく私の元へ飛びついて来たので、慌てて抱き抱えた。


「あ、こらっ!虎丸っ」

注意するクラさんの声は華麗に無視して、私を見つめながら、おかえりと言っているかのような表情で見つめてくるので、可愛くて仕方ない。



「まったく……。若、結城さん、お疲れ様っした!」


深々とお辞儀する姿を見て、若への尊敬を改めて感じる。

私はなんだか自分の名前が呼ばれたことに、居た堪れなくて軽くお辞儀をし返した。

すると、クラさんが優しい笑みを向けてくれる。

なんだかその顔を見ただけで、家に帰ったきた、そんな安心感があった。