「…ありがとう。」
そう小さく言えば。
要くんは、「その代わり、敬語やめていい?」と小首をかしげながら、可愛く笑った。
「飛鳥さんは……」
「え、」
「…あ、竜おかえり。遅かったじゃん?」
その言葉に顔をあげると、
ガタンッと、テーブルが鳴って。
「ちょうど切れてた」
透明な中に入った緑の液体が、心地良さそうに、ゆらゆらと揺らいでいた。
「なら別のにすりゃいいのに」
「…これが良かったんだよ」
………メロンソーダ。
さっき飲んでいたのもメロンソーダ。
…そっか。飲み物は、メロンソーダが好きなんだ。
よし、覚えとこう。
そんなことを考えていたからか、あたしはいつのまにか無意識に、竜くんの顔を見詰めすぎていたらしい。
「オマエ、うざい」
そこには苛立った声と、眉間に皺を寄せた竜くんがいて。
そして、仕返しのように、
あたしのイチゴパフェの真ん中にいた苺をぱくっと、食べてしまった。
あっ!それ、楽しみに取っといたのに…。
本気でちょっとがっかりしていたら。
要くんが笑いながら、そっと耳打ちしてきた。
「竜、イチゴパフェが大好きだから」
思わず、笑ってしまって。
竜くんの機嫌は、また悪くなってしまったけど…。
…よし。やっぱり次の金曜日は、オムライスにしよう。
そう、心のなかで誓った。