「あ、おいっ!俺は結城には食べていいつったけど、お前には言ってねぇぞっ」


「なによー。どうせ余るんだからいいでしょぉ?ケチくさいわねっ」


「なんだとー!?」



途端に始まった2人の、口喧嘩。


あたしは巻き込まれないように、大人しくパンを食べていた。



あ、このパン美味しいかも。今度買おう。



惜しみながら、最後の一口をぱくっと口の中に入れた。




ガラガラッ


少し大きめのドアの音が聞こえて。


そして、きゃあきゃあと興奮した声が、教室の中に入ってくる。



「やばい、やばいよっ!王子からパン貰っちゃったよっ!?」


「ねっ!あ~もうどうしよう!食べないでこのままとっておきたいよぉ~」


「それは無理でしょー!早く食べないと、美和さんたちが回収しにきちゃうよ!」


「そうだねっ!!それにしても、なんであんなにパン買ってたんだろう?」


「さぁ、なんでだろう?」





………美和さんって、どっかで聞いたことあるような…。



うーん、と首をひねりながら、ゆっくり考えてみる。



目の前にいる2人は、もう口喧嘩は終わったようだ。





「王子がパン!?なにそれー!!あたしもそっちが欲しかったあっ!!」


といいつつ、神崎くんのパンたちに手を伸ばしている亜美。


「オイッ」といいながらも、神崎くんも3つめになるパンを手に取っていた。



気付けば、パンの山はかわいいもんになっていた。