「…なにしてる。」




びくっ、として振り返れば。声から想像した通りの人がいて。




「蓮見くん」




トイレにでも行っていたのだろうか、眠いせいか少し曇った瞳がこっちを見ていた。




「あ、えっと……勝手に台所とか借りてごめんね?」



「なにしてた」




そんなことどうでもいい、とでも
言うかのように、もう一度聞いてきた。





そう言えば、蓮見くんとこうやって2人きりで話すのは、あの日、満月の夜、以来だ……。なんて、思い出した。




「…えっと、」


「……おに、ぎり?」



あたしが答えるより先に、いつの間にか近付いてきていて――――バレてしまった。


けどそれよりも、まったく気配がなかった蓮見くんに驚いた。



「…腹減ったのか?」



その、じっと――探るように見つめてくる眼に、弱いのかもしれない。



「………竜くん、の」



「…竜の?」


「夕飯、来なかったから。お腹すいてるかもしれないと思いまして…」



最後の方の言葉は、なんでか声が小さくなった。





「で、置いといたら食べるかもって?」



その問い掛けに、首を縦に振る。



夜お腹を空かして、食べ物を探しにくるかもしれないし…。






「………お前も、ばかなやつだな。」


呆れたように、ため息をつくように吐かれた言葉。









「…確かに、自己満でしかないけど……」





喋りながら顔をあげたら―――蓮見くんは少しだけ、微笑んでいた気がした。


見間違い、だったかな。