目立たない所―――学校の裏門の近くで降ろしてもらい、
「あの……ありがとうございましたっ」
「…いえ。お気をつけて行ってきて下さいね」
柔らかい笑み。
なんだか、嬉しくなって。
「はい!行ってきますっ」
思わず、言っちゃった……。
行ってきます、なんて。
ちゃんと“誰かに”言えたの、何年ぶりだろ……。
なんか、恥ずかしい。
でも、くすぐったいような、胸がポッて暖かくなって…。
「朝からにやにやして、どうしたの?」
「ううん!別にー」
ああ、どうしよう。
あたしもしかしたら……
あの運転手さんに、恋してしまったかもしれない…!
だってさっきからずっと胸の奥がポカポカしてる…。
はっ!大変!
あの方の名前を聞くのを忘れてたわ…!
今度聞かなきゃ!
…ガラッ
小さくガッツポーズをして、誓いを立てていれば、
扉の音と共に――――黄色い声。

