だけど、優しく微笑むこの人は、とても悪い人には見えなくて……。
「…結城、飛鳥です…」
「結城、飛鳥……良い名前だ」
そう言って、微笑むこの人が…一瞬、記憶の中のお父さんと重なって…。
「…父が、自分の力で自由に空を飛ぶ鳥のようになって欲しいと、付けたそうです…」
思わず、見知らずの人にそんなことを言っていた。
今まで…誰にも言ったこと、なかったのに。
「そうか。…いいお父さんだね」
「…はい……」
優しく微笑む。
その笑顔を見ていたら、なんだかまた、無性に泣きたくなった。
男の人は、あたしが今出てきた所へと入っていった。
結局、誰なのかわからなかったけれど、
それでも、それでいいような気がした…。