銀白虎





どうしていいのかわからない…。



なにか、言いたかったけど、

これ以上傷口をナイフでえぐってしまいそうで怖かった…。



なにも出来ない…。



昔から、あたしはいつどこでだって、無力だ……。



そして決まってあたしが次に取る行動は…



あたしの顔なんて、見ていたくないだろう…と。




「…あれ?結城さん、お帰りですか?」


「…はい…」



これは、ただの逃げ、だ。


言い訳を盾にした……ただの逃げ。




「送っていきます!…若は?」


「大丈夫です!!!」


「結城さん…!?」




なんて、あたしはずるいのだろう。



そんなずるいあたしを、誰にも見られたくなくって…。


早歩きしていた足を、走りだしてしまった。





一刻も早く、この場所から……立ち去りたくて。




前も見ず、走り続けていた…。