『これ、次の授業の教材?』


他のことを考えていたあたしを、蓮見くんは今の状況へと引き戻す。


『えっ?』

周りを見渡すと、辺りには、さっきまで持っていた実験の教材が散らばっていた。


……そうだった。



『あー…うん、そうなんだ。運悪く任されちゃって!』


あたしは頭に手を起きながら、笑い飛ばす。



はぁ…またこれ持って階段上るのか…。


そう考えると、溜め息が出た。



『重そうだね。こんなの女の子じゃ大変だよ』


そういって、散らばる教材をささっと集め始め、積み上げたと思ったら…ひょいと持ち上げた。


え…?

戸惑って、「は、蓮見くん?」と声を掛けると


『俺が持ってくから、大丈夫だよ。こんな重い物、女の子に持たせるもんじゃない』


にっこりと、いわゆる王子様スマイルを向けられた。




キャァァァアーー!!



突然あがった叫び声に、思わず耳を塞いだ。


周りを見渡すと、いつのまにか階段上に亜美を含む…ギャラリーが集まっていた。

更に、絶叫は下からも聞こえたので、きっと階段を上っていた人達のものだろう。