確かに…虎丸ちゃんを送り届けたあたしに、もう用はない。
でも、どうしてだろ。
わかってるけど…。
傷ついてる自分がいる。
思わずうつ向いて、唇を噛み締めた。
前もそうだった…。
蓮見くんは、自分のテリトリーに他人が入るのを、嫌う。
壁を、作ってる……。
「…わかった。」
でもそれは、あたしも同じ──…。
仕方ないんだ。
あたしがここにいる必要性はないし、帰ろう。
だいたい、ここには前に来た時の嫌な思い出もある。
早いとこ、帰ろ…。
「くぅーん…」
鳴いて、切なげにあたしを見る虎丸ちゃん。
「ごめんね」
頭を撫でて立ち上がると、足元に近寄ってきて、スリスリしてくる。
行かないで。って言われるよう…。
でも。
「虎丸。」
さすがの虎丸ちゃんも、蓮見くんの言うことには逆らえないらしい。