奇跡と呼ぶには

「結衣?どうしたの急に」

その日の深夜。
急にインターホンが鳴ったと思ったら、
ドアの前に立っていたのは数時間前にも見た顔。

「ごめん、連絡もせずに」

「大丈夫。入って?」

家に入れるために引いた手は、驚くほどに冷たい。

温かい紅茶を用意して結衣と自分の前に置いた。

「...いーちゃん、ほんとに辞めちゃうの?」

「...わかんない。」

「ゆいは辞めて欲しくない。」

「当たり前だよ。」

「でも、いーちゃんがそうしたいなら応援する」

ああ。うちの最年少は、こんなにも強い。

デビュー当初は、上手く踊れなくて、もういやだと凪沙に泣きついていたのに。

3年という期間は、人を強くするのには十分だった。