奇跡と呼ぶには

「伊織。」

凪沙と結衣が出て行ったのを見ながら、伊織の名前を呼ぶ。

何回も何回も呼んできて、これからも当たり前に呼び続けられるんだろうなって思っていた、その名前を。

「...」

「伊織は、誰よりもグループのことが好きなんだよ。そうでしょ?」

「...」

「...話してくれるの、待ってる。」

「...ごめん。」

伊織の顔が歪むのを見て、ハンカチを手渡す。

「ん。」

「...いいよ、」

「ちゃんと、返しに来てね。」

返事を待たずに部屋を後にした。