口説いてんの?


俊也は、顔を歪めて怒鳴った。

「気付けよっ!」

薫子は思考を巡らせ

いろんな可能性を追い求めて

一つの結論を搾り出した。

薫子は、半分だけ顔を上げて切り出した。

「俊也の気持ちには応えられない。

 私、付き合ってる人がいる。

 ごめんなさい!」

薫子は一気に言って、静かに息を吐いた。

「マジかよぉ!お前ふられたって?!」

「そ、それは、そうだったんだけど・・・

 そうなっちゃったんだぁ」

その時、バイトの子が厨房に入って来たので

話は中断してしまった。

『お疲れ様です。お疲れ』

二人は、何事もなかったように返事をして

作業を再開した。

その子が店から出て行くのを

これから強盗にでも行くのか、というくらい

息を潜めて待っていた。