口説いてんの?


すると、凪斗は真剣な顔を向けて

大人びた口調で言った。

「本気ですよ。でも、友達としての関係が

 壊れるのが嫌だって言ってました。

 だから、そういう方法をとったんです」

薫子は、複雑な感情に包まれて

心が重くなったように感じ

壁に貼ってあるポスターに目線を動かした。

誰かを選ぶと友達関係が壊れるの?

だったら誰も選ばないよ。

私も壊したくないから他の人を探すよ

と思った時、ポスターがぼやけて

違う顔が浮かんで見えた。

その目線をゆっくりと凪斗に戻すと

二つの顔が重なった。

薫子は、目にしたものを

心の中へしまい込み、俯いた。

「薫さん?」

「訊かなかった事にするよ。

 私も、今の関係が壊れるのは嫌だから」

薫子は心を鎮めるのに必死だった。