口説いてんの?


薫さんが鏡台に座り

化粧水の瓶を手にすると

猫が何処からともなく近付いていった。

「薫さんが好きなんですね。

 さっきもお風呂に行った時

 一緒に着いて行ってましたよ?」

「うん、いつも着いて歩いてる。

 一緒に寝るし、一緒にご飯食べるし

 私が泣いてたら涙を舐めてくれるし」

「え?薫さんが泣くんですか?」

「私だって泣くでしょ?!

 まぁ、最近はないけどね」

薫さんがドライヤーのスイッチを入れると

猫が驚いて逃げ出し、俺の後ろに隠れた。

暖かい風が薫さんの香りを部屋に広げた。

こうして見ると、薫さんは凄く女だった。

頬が上気して、少し色っぽくて

俺は理性を失いそうになった。

やっぱり今日しかチャンスはない。

俺は、自分に喝を入れるため

軽く両頬を叩いた。