口説いてんの?



薫さんが部屋を出て行くと

猫も着いて行ってしまったので

この部屋には俺だけだ。

テレビを見ていても落ち着かず

もう一度部屋を見渡した。

あの扉はたぶんクローゼットで

壁には帽子とサングラスが

センス良く飾られていて

俳優のポスターが一枚貼ってある。

奥のカーテンで仕切られた場所に

ベットがあるのだろう。

鏡台と大きな姿見があり

猫のハウスはトイレとして使われている。

鏡台とポスターがなければ

女の人の部屋にはとても見えない。

だけど、香水か化粧品の微かな匂いが

鼻腔をくすぐっていた。

「ニャー!」の声と共に

猫が部屋に戻ってきて、俺の隣に座った。