俺は、薫さんの横顔をチラチラと見ながら

声をかけようか迷っていた。

一人になりたくないし

飲みたい気分でもあった。

薫さんが怒ってる理由も知りたかったし

チャンスだとも思っていた。

でも、どう切り出そうか悩んでいると

薫さんが声をかけてきた。

「真っ直ぐ帰る?

 ちょっと飲みたい気分なんだけど?」

「良いですよ。居酒屋でも行きますか?」

「嫌だ。ゆっくり飲みたいから家に来る?」

俺はハッとして

すぐに答えられなかった。

「嫌なら無理にとは言わないけど?」

「良いんですか、俺が行っても?」

「なんで?俊也も泊まった事あるし

 親は何にも言わないよ」

「はい。

 じゃあ、何処かでビール買いますか?」

俺は、声が上ずらないように

気を付けながら答えた。