いつからだろう。みずきが拒否するようになったのは。
思い出せない。でも、もう思い出せないくらい、妻のみずきを抱いたのは過去のことになっている。

みずきに嫌だと言われたことはない。ただ、手を伸ばしたときにすっと離れていく瞬間、横になっているときに髪を撫でようとすると、それとなく頭を動かしてしまう時、酔っ払って帰ったときにキスをしようとすると、「お酒臭い」と笑いながらすっと脇から逃げてしまった夜。そんなことが続くと、ようやく気づいた。みずきは俺を避けている。

寂しいと思うが、それでもみずきが自分を嫌いになったと思わない。相変わらず大吾の携帯をこっそりチェックするし、最近ではカバンの中身まで確認しているようだ。いつからか、みずきの病的までの「どこにいるの?」「誰といるの?」「何しているの?」メールがみずきの愛情表現だと感じ始めた。こいつの死に水を取ってやる。大吾の浮気が初めてばれたとき、誓ったことだ。みずきは一生のパートナー。こいつは俺にとって別格の存在。一緒に墓に入る、死んでも俺のパートナー。「別れる」と泣いたみずきに大吾はそう言った。「だから俺はお前と別れない。お前は俺の人生の一部なんだよ。」

みずきに対する気持ちは嘘ではない。この先、どんな良い女が現れても、みずきとは一生添い遂げる。それが男だ。大吾はそう思っている。