クソ真面目なアイドルに、幼なじみの一途が重症です。



そして、ついに第三次審査の、一番重要な『結果発表』の放送日がやってきた。


テレビの画面越し。

張り詰めた空気の中、審査員の口から次々と通過者の名前が呼ばれていく。
『通過者4人目。一一一一早瀬暁』


暁の名前が呼ばれた瞬間。

画面の中の暁は、大きく息を吐き出し……いつもは絶対に人前で見せないような、ホッとして泣きそうに顔を歪めた表情を一瞬だけ見せた。

(……あきっ)

『君の努力と覚悟は、必ず誰かの心を動かす。このままトップまで駆け上がる素質が君にはある。この後も努力を続けていってください』

プロデューサーからかけられたその高い評価の言葉に、暁は涙を堪えるようにグッと唇を噛み締め、深く、深く頭を下げた。

その、痛いほど真剣な横顔を見た瞬間だった。

ドンッ、と。

胸の奥に、冷たくて重い杭を打ち込まれたような衝撃が走った。

(ああ……そっか)

どれだけ本気で暁がこのオーディションに挑み、自分の全てを懸けているのか。
画面越しのその顔が、私に分からせてくるのだ。

彼はもう、私が勝手に部屋に入って漫画を読んだり、放課後一緒にコンビニに寄り道してふざけ合える『ただの幼なじみ』じゃない。
二人でじゃれあったり、甘い声で名前をよんで、あの夜にキスをした『私の好きな人』でもない。

彼はこれから、数万人のファンに愛され、手の届かないステージの上で輝き続ける――『アイドルの早瀬暁』になるのだ。

それがどれだけ凄いことか分かっている。
分かっているのに。
分かっているからこそ。

「……あき、すごいよ。本当に……っ」

テレビの前で一人。
ぽろぽろと零れ落ちる涙。

もう二度と手が届かない場所へ行ってしまう暁への、どうしようもない喪失感と寂しさでいっぱいだった。